宏精堂 家門表具店

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平成27年11月 宝塚市/萬正寺 襖張替工事

仕事の概要 - 守り伝えて行く重み

萬正寺本堂

宝塚市内で一番北にある上佐曽利の深宮山萬正寺。真言宗大覚寺派直末の古刹で、今の御堂も築300年以上だそうです。

平成26年5月に襖絵の剥離を押さえるお仕事をさせていただいた御縁で、このたび、持仏堂の襖の修理をさせていただく機会に恵まれました。

300年以上の歴史を刻んだ持仏堂は、敷居も波うち、柱も歪んで、隙間と言うには大き過ぎる間隙が開いていたり、動かない襖があったり、また逆に簡単に外れてしまう襖があったりと、張替えよりも新調をお薦めしたくなる状態でしたが、御住職はあくまでも張替えを希望されていました。

その理由は、「守り伝えて行く重み」だそうです。その思いを大切に、新調ではなく御堂とともに300年以上の歴史を歩んできた襖の下地を御堂の歪みに合わせて細工し、納めることになりました。

下地を加工するために剥がした襖紙は5枚です。古い方から西宮市名塩の間合紙(菊紋)、京唐紙(松)、京唐紙(波)、鳥の子紙(無地)、鳥の子紙(無地)が張られていました。その他、補修に使われていた紙の中には、明治37年(1904年)11月11日(金)の「大阪毎日新聞」をはじめとして、その補修した年代の紙がいろいろとでききました。年号が解る一番古いものは、なんと約230年前の天明4年(1784年)9月のものもありました。

上張り、中貼りの紙を丁寧に剥がし、建て合わせをした寸法に従って下地を加工し、下貼り、中貼りの工程を経て、今回は鳥の子紙(無地)を上張りに張りました。また、割れたり欠けたりしてしまっていた縁を交換し、塗りが剥がれている部分は補修し、引手も磨いて錆や汚れを落として塗装し直して再利用しました。

お納めする際に、建て付けの最終調整を行ない、ぴったりと隙間なくとまでは言えませんが、襖の動きも軽く、隙間もなんとか許容範囲に納めることができました。これでまた襖も、御堂と一緒に歴史を積み重ねて行くことができます。

お客様の声

平成27年7月にお送りした暑中見舞いに対し、御住職よりいただいたお葉書を紹介いたします。

拝復

お見舞いありがとうございます。襖の調子は順好です。

古い建物で保修作業に追われますが、ご協助に感謝申し上げます。 敬具

四代目店主より

このたびは大変貴重な経験を積む機会を与えていただきありがとうございました。

お寺は檀家さんと地域のもので、自分が預かった時のまま、仏様も教えも建物もしっかりと守り、次代に伝えて行くことが住職のつとめとのお言葉に感銘を受けました。

古いものは捨て、新しいものに入れ替えて行くのがあたりまえになっている世の中にあって、歩んできた歴史を大切にし、使えるものはしっかりと直して次に伝えて行くということは、我々表具師の仕事にも通じます。掛軸や屛風の仕立直しではいつも心がけているのですが、襖や障子にも言えるのだと改めて考えさせられました。

この経験を活かし、「守り伝えて行く重み」の担い手の一人として、今後も精進を続けたいと考えています。

あらためまして、このたびは宏精堂家門表具店をお選びいただき、誠にありがとうございました。

四代目店主 一級表装技能士 家門 秀行