宏精堂 家門表具店

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技能検定制度について

表具師の国家試験

技能検定の概要

表装技能士の検定試験は原則として年1回(受験希望者が全国で100名を下回ると2年に1回)、実技試験及び学科試験が行われます。学科試験は全国一斉に9月上旬に行われますが、実技試験は学科試験より前に行われ、各都道府県ごとに実施条件や試験日が異なります。(兵庫県では8月初旬に実技試験を実施しています)

実技試験では、与えられた課題を商品として認められるの一定以上の水準で作成します。作業時間は 2級が4時間(10時~15時)、1級が5時間(10時~16時) なのですが、途中、12時~13時 は昼休みで、試験室から締め出されてしまいます。たとえ糊付けの作業中であっても強制的に作業を中断させられるので、12時までに糊付け作業を終えられる見込みが無ければ、午後にその作業を回さなければなりません。つまり、この昼休みの時間を乾燥に利用できるように上手く作業工程を組み立てなければ、絶対に合格は不可能なのです。

もちろん、試験課題を当日に発表されたのでは、誰も合格することは出来ないでしょうから、試験日の10日から2週間ほど前にその課題は公表されますし、講習会も行われますので、作業工程などを予めチェックし、何度も練習しておくことは出来ます。

学科試験はマークシート方式で行われます。試験時間は100分間で、真偽法25問、多肢択一法25問の合計50問です。以前は誤答が減点されていたので、解らなければマークをしない方が良かったのですが、現在は減点されませんので、解らなくても全問答えた方が得になりました。ただ、試験問題を東京で作っているようなので、専門用語は関東の用語が多いです。関西人の我々にとっては思わぬ落とし穴となりかねないので、事前に関東の用語を勉強しておく方が良いでしょう。

検定制度の抱える問題

厚生労働省によると、技能検定は、労働者の技能の程度を検定し、国が技能を公証することで労働者の技能習得意欲を増進し、技能に対する社会一般の評価を高め、労働者の技能と地位の向上を図るものと定義されています。

しかし一方で、一級建築士や自動車整備士のように、この資格がなければ仕事ができないというようなものではなく、この資格には、何の効力もなく表具組合員のための組合員の資格でしかありませんと言い切る表具師さんがいるのも現実です。

実際、表装技能士でなくても表具店を開業することができますし、表具の仕事に携わることが出来ます。(例えば、シルバー人材センターで働いてらっしゃるお年寄りで、表装技能士さんは殆どいらっしゃらないと思います)

では、本当に何の役にも立たない物なのでしょうか? 少なくとも私はそうは思いません。

どのような仕事でも、それに携わる者として、自分の仕事に責任を持つのは当然の事です。もちろん、表装技能士の称号を持たない表具師さんや、シルバー人材センターのお年寄りの皆さんに、仕事に対する責任感が無いとは決して思ってはいません。むしろ生甲斐を感じて一所懸命に働いてらっしゃる方も多いと思います。私が言いたいのは、技能士自身が技能士なんか何の役にも立たないと考える事自体が、大きな問題であるという事です。

検定試験に合格し技能士になると技能士番号が与えられ、厚生労働省に登録されます。そしてその番号は、生涯ついて回ります。ですから、技能士はその責任をより重く受け止めなければならない立場にあるのです。目先の利益としては何のメリットも無いかもしれませんが、自らの仕事に誇りと責任を持って臨めば、大きな信用を得る事に繋がると思います。そして、その信用を得るには、技能士である方が有利だと思うのです。

何のメリットも無いと言ってしまうのではなく、その称号に恥じない仕事が出来る環境作りを進める事も、我々技能士の大きな使命だと考えます。我々自身のメリットだけでなく、消費者保護の観点からも、制度そのものの運用方法について、政府に働きかける時期が来たのではないでしょうか。

現時点では、その表具師さんの技術レベルを測る一つの目安でしかないですが、将来的にはドイツのマイスター制度のような国家資格に高めて行く事が、労働者の技能習得意欲を増進し、技能に対する社会一般の評価を高め、労働者の技能と地位の向上を図るという技能検定制度の趣旨に照らしても妥当だと考えます。そして、それがお客様である消費者の皆さんのメリットにもなるのですから。

文責:家門 秀行

※ 引用部分は執筆当時(10年以上前)のものであり、現在は削除されていたり内容が変更されていたりしています。